WEEKLY INSIDE STORY
第258号 史実に忠実も限界?
金沢城再興にあたって
2007年11月1日
今石川県では、金沢城を再興すべく、順次櫓や門を整備しつつあります。
本年は、河北門を再建する予定で、工事にこれからかかりますが、「史実に忠実」というのが基本です。将来の文化財への指定や世界遺産を狙ったときには当然必要となってくるわけです。
ところが、私が顧問をしております石材組合の方々と過日お話をしたところ、門の基礎となる石組みにおいて、課題がでてきたということでありました。
史実に基づいて青戸室石を使うようにといわれているそうですが、現在の青戸室石は産地となる山の違いから、強度や品質の観点から、使いたくても使えないという現実があるそうです。
戸室石に赤と青があり、今は赤戸室石のほうが、強度もあり、品質的にも揃っているそうですが、県庁担当課にそのことを伝えますと、初耳のようでありました。
まさに、金沢城再興にあたって専門家や有識者の判断を仰ぎながら設計等をやっているわけですが、時代が違うわけですから、思うようにはいかない実情というものを垣間見た想いでした。
同時に、現場の声が如何に大事かということも、問われてくるわけでして、今後、この問題をどう解決してゆくのか、注目されるところであります。
金沢城の再興は、本県の職人の技術の継承という点でも意義あるものですが、同様の問題が他の分野でも起こりうる可能性は否定できないでしょう。