WEEKLY INSIDE STORY
第343号 県立中央病院の建替えのからくり
累積欠損を残したまま
2010年03月10日
前々回のコラムで述べました、知事が表明した県立中央病院の建替えについて、報道がでたとたん、早速様々な業界から関心が寄せられました。
公共事業が縮減する中、本県にとっては久しぶりのビッグ・プロジェクトになるからです。
勿論、調査検討にはいるだけですから、すぐ基本設計・実施設計とは行かないものと思われます。
さて、かねてより累積欠損が多額なまま建替えするということは、従前の減価償却残を引きずることになり、新病院の経営の足をひっぱるものとして、危惧しておりました。
従って、老朽化や最新医療器械導入への問題など課題はあるとは承知しつつ、建替えはまだ相当先と見ていたわけです。
平成20年度決算では医業収支において、減価償却も含めると120400万円がでておりましたので、そこからその年に使った建設改良費66700万円を引きますと、実質53700万円が残ります。
20年度末の累積欠損金681400万円をこの額で割り返しますと、12年余りで累積欠損はなくなるという計算が成り立つわけですが、あくまでのそれだけの純利益が毎年でるという前提の話です。
やはり、当分建替えは無理ということになるわけですが、実は毎年県立中央病院には、一般会計から、つまり我々の税金から、それなりの負担金をだしており、20年度でいえば、その額69100万円です。
よく自治体病院は赤字ということがいわれるわけですが、本県においても、この一般会計負担金がなければ、実質赤字であることに間違いはないのです。
この一般会計からの負担金をくりだすというのは、総合病院であるばかりに、非採算部門や高度医療をもたざるをえないのでというのが理由でありますが、この負担金をこれからも続けてゆくということが前提にあるので、建替えに着手できるということになるのです。
ここが民間病院との大きな違いです。
負担金をだしても存続すべき意義を県民にどう理解してもらうか、また病院にはそれに甘んじることなく効率も念頭に置く経営努力というものを求めてゆきたいと思いますが、あらためて行政システムの一特質を垣間見た事例でありました。