視察報告
全国都道府県議会議長会主催欧州地方行政視察団に参加して
2007年05月28日
全国都道府県議会議長会主催欧州地方行政視察団に参加して
今般、北欧を中心に老人福祉を主にしての視察の機会に恵まれた。訪問地は、デンマーク、ノルウエー、スウエーデン、
イギリスの4ケ国である。
5月14日金沢を出発、成田で1泊したのち15日11:45発スカンジナビア航空984便にてコペンハーゲン(デンマーク)
に向かった。
一行は4県(石川、新潟、徳島、高知)の県議会議員17名と全国議長会事務局小林副部長及び添乗員として近畿日本ツーリスト
より野田氏が同行してくれた。
本県よりは吉崎、木本、長井議員が一緒である。
福祉の先進国但し高福祉、高負担であるといった見方が定着しているのが、これから訪れようとしている北欧諸国である。
中央集権体制の中で全国一律の福祉行政がおこなわれている我が国とどのような違いがあるのか、そのようなところが今回
の主眼であり、地方分権の流れの中で本県の目指すべき福祉行政のありかたに参考になればこの視察の意義は果たせたものと
思う。
海外も数を重ねると、国内視察と特別違いを感じなくなる。最近オンブズマンがマスコミの潮流にのり、同時に議員の海外視察
が批判の目に晒されていることは承知している。
しかし、私はあくまでの本人の姿勢次第であると思っている。というのはどんなスケジュールをもってしても本人にその気が
なければ遊びに終わってしまうだろうし、逆にどんな企画でも本人の意欲があればすべて勉強になると思うからである。
5月27日18:00ロンドン発全日空202便にて帰国の途に着くまで、時差ぼけに悩ませられながらもいい視察であった
と感じた次第である。
限られたスペースであるが、個々の違いは多少あるにしても北欧での共通事項を中心に据えて、総括的に所感を述べてみたい。
(1)日本では北欧は”高福祉高負担”ということばかりが喧伝されているが、単に付加価値税
や直接税の多寡だけで日本と比較するのは単純すぎる。
即ち年金保険料がかからない、医療費が基本的には無料である、高等教育まで教育費がかからないなどのこれらの国の特徴は、
我が国における総合的な福祉、教育にかかる負担費と一般の税負担とを全体的に合算したものと比較しないかぎり、この良し悪し
は判断できないのである。ちなみに付加価値税(日本の消費税に相当)は25%が主流であった。
(2)施設の充実度あるいはサービスの質といった点では我が国の厚生行政そのものが既に北欧の
内容を取り込んでいるせいか大きな差は感じられない。寧ろ特別擁護老人ホームや老人保健施設の器具、器械等は我が国のほうが
完備している点も見受けられる。
但し、ストックホルムでの足の療養器械(フットボード)専用室や、手を温めるためか暖めた砂をリハビリ室の前に置いてあったのは
初めて見た。
(3)高負担についての国民の意識は非常に成熟しており、政治への信頼を前提に今後もサービスの
向上とは不即不離の関係にあることを認識しつつ、高福祉高負担についてプラスのコンセンサスができている。
行政施策が国民に目に見える形で実感できているというのは大変素晴らしいことである。我が国における福祉ただ乗りや
打ち出の小槌があるかのような錯覚は税体系の違いからきているものと思われる。つまり国税で徴収し再配分されるのと、地方税
で殆どまかなわれる行政との違いである。
(4)地方分権の流れは現在も進んでおり、特に福祉サービスはより身近なところでとの
認識から、50万人程度の都市でも分区の動きがある。
モデル地区を設定して地方分権の試行をしているところもあった。
(5)個別の対応にあたっては各諸施策があくまで高齢者、障害者など本人の意向を
最優先するとの視点から、きめこまかくかつ柔軟に行われており、行政施策の多様性確保の点からは大いに参考にすべきである。
一人一人の障害の違いに的確に対応するべく、介助器具も含めて多種の製品、多種の選択肢が用意されていた。
-北欧にて-