WEEKLY INSIDE STORY
第191号 相容れない地域再生と産業再生?
鬼怒川温泉郷視察から
2005年12月1日
過日、観光・交通対策特別委員会の視察で、栃木県鬼怒川温泉郷の現状を見てまいりました。
本県でも、加賀温泉郷での廃業旅館の問題などを抱えており、参考になればということで、当地の旅館組合の役員の方から説明と、現地視察を行なってまいりました。
首都圏から約2時間でつきますので、今日まではその温泉宿泊数を心配しなくて良かったのですが、旅行形態の変化、景気の落ち込み等により平成5年のピーク時には340万人あったものが、昨年では220万人にも減少しているとのこと。
結果、バブル時期に過剰投資を行なった旅館など、廃業して廃墟となった建物がいくつも見受けられました。
そのような中、国の地域再生計画認定制度に乗っかって、温泉郷全体で再生計画を建てておられました。ハード事業としては、駅前のイベント広場、河川への遊歩道など、観光客の回遊性を目的としたものが実行に移されていました。
まさに単体としての旅館ではなく地域全体で観光客を呼び込もうとするものです。
本県の「山中温泉ゆげ街道」などのような地域づくりを目指しておられるのです。
その後、産業再生機構による再建中の旅館に宿泊し、そこでは再生機構から出向された社長にお話を聞くことが出来ました。
その旅館は、鬼怒川では老舗の大型旅館です。館内にすべての施設が整っており、宿泊者は全く外にでる必要がありません。
社長の立場からすれば、早くこの旅館を軌道にのせなければならない訳ですから、従前の施設をいかに活かすが大きな課題であり、地域のことには構っている余裕がないというのが率直なる想いのようです。
事実、館内に新たにパソコン常備の洋室や、セラピールームの新設など、館内でのリニューアルに投資をしておられました。
結果、温泉宿泊客の取り込みという点で、再生機構の目指す旅館と、旅館組合の目指す地域再生が、合い矛盾するということになっているのです。
しかも、再生機構に委ねられない旅館は、依然として新規設備投資の余裕など全くないのが現実で、総論としての目指す所は理解しつつも、地域再生の難しさを実感した視察でありました。
ゴルフ場の再建でも似たようなことがありますが、いまいち産業再生機構のあり方に納得しがたい部分があるもの事実ですね。